中原昌也『マリ&フィフィの虐殺ソングブック』

カテゴリー 読書記録

企画としては面白いけど・・・

読書記録の一発目がこの作家なのはいかがなものかとも思いましたが、とりあえず始めないと始まらないので記録しておきます。

『マリ&フィフィの虐殺ソングブック』は中原昌也さんのデビュー作。中原さんの作品を読むのは(ほぼ)初めてです。

この方の名前はもちろんずっと以前から知っていて、三島由紀夫賞を受賞した『あらゆる場所に花束が…』は学生の時に手を出してみたのですが、少なくとも当時の自分には合わなかった。そもそも三島由紀夫じたい苦手なので当たり前っちゃ当たり前の話なんですが、言葉だけで作られた小説のように感じてダメでした。
規格外の世界観やオリジナルの(かなり歪んだ)イメージ・発想力はすごいのですが、小説ってもっと構造的で全体を通して読むもの、という僕の小説観とは合わなかったのだと思います。
小説家というより詩人に近いんじゃないかと。

今回中原さんを読んでみようという気になったのは、ここのところずっと小説を読んでいなくて、ひょっとしたらそのブランクが自分の凝り固まった小説観を和らげ、もっと自由で柔軟な作品を読めるんではないかと思ったのと、ショートショートの集まりで、忙しい中でも読めるんじゃないかと思ったため(むしろこっちの方が理由かも)。

気軽な気持ちで読んでみたのですが、なかなか面白く読めました。
文章は格別うまいわけでもないのですが、とにかく一文一文がぶっ飛んでいて、この作家は想像力のボルトが完全に抜け落ちているなといった印象。
自分の頭に浮かんだイメージをなんの抑制もかけずにアウトプットできる。そういう意味では確かに「天才」的かと思いました。

ただ、やっぱり全体的な印象は「弱いなぁ」というものでした。
いくら強烈なイメージを繰り広げても、作品を途中でぶった切って終了しても、小説として「弱い」。
読んでいる瞬間は刺激的なのですが、読後に残らない気がします。
優れた小説は読みながら、そして読み終えた後、かさを増して膨らんでいくものですが、この作品は徐々に痩せていくような印象を受けました。

言葉だけで作品を作るのはやはり難しいのだなと。
「いったいいつの時代の小説観してんだよ」ってこの作品を評価する人には笑われるのかもしれませんがね。

ただ読むのは面白いは面白いので、他の作品ももうちょっと読んでみようと思います。
『あらゆる場所に花束が…』も再読してみます。

ライフワークはジャズとランニングと横浜ベイスターズ。無駄に絶対音感あり。ピアノを弾きます。

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